涙でリールが見えない RYO from ケツメイシ

2024.10.08

 たまたま飲み屋で隣の席にいた、ムキムキで日焼けしたタラちゃんカットのAV男優風の原田さん(仮名)。飲みながらたわいも無い話していると、どうやら「反社」ではなく地域に根ざした「街の不動産屋さん」であることが判明。

街の不動産屋さんという性質上、地元の賃貸物件の紹介や管理がその主な業務らしい。

地元資産家の不動産物件の管理はもちろん、飲み屋をオープンしようとする志高い若者への物件の紹介、その裏にはそれぞれの人生が見え隠れする。

限りなく上もいれば下もいる。家賃を滞納しまくる売れないミュージシャン、突然いなくなる外国人の賃借人、そもそも過去の履歴から入居審査すら通らない人などなど、社会の縮図がそこにはある。



そんな原田さんに突然舞い込んできたミッション・インポッシブル(極めて危険で難しい任務)が、

「おばあちゃんを安心安全に脱出させよう」作戦 である。

そのおばあさんは専業主婦「K子」68歳。旦那からのモラハラを20年以上に渡り受けてきました。原田さんは別の地元資産家のおばあさまからK子さんの紹介を受ける。そのおばあさまとK子さんは毎週日曜日の教会のミサで知り合いになったらしい。

K子さんの旦那は某大手企業の元役員、仕事が出来るのか定年後も経営顧問として全国を飛び回る生活。二人の息子たちが独り立ちしてからますます旦那のモラハラは酷くなり、身の回りの世話、3食の食事は勿論、それが口に合わなければ怒鳴り散らし、買い物などのわずかな外出にも旦那のチェックが入り、家にいる時はほぼ召使状態という異常な夫婦関係。旦那が出張中も家に居るかどうかをモニターで確認される。そんな彼女が唯一、長時間外出出来るのが「心の安定」を求め通うようになった日曜日のミサなのである。

「どうにかして彼女を逃してあげて!」

ミサで知り合いになり、身の上話を聞くようになったおばあさまが元々知り合いであった原田さんに助けを求めてきたのが話の始まりである。人様の生活には様々な事情があり、通常他人の家庭には口は挟まないのが業界のルールですが、そこは原田人情不動産、

「分かりました。なんとかしましょう。」(原田さん)

モラハラ亭主の厳しい管理の元、「果たして脱出は可能なのか?」「旦那の生活で気になる事はあるか?」「これまで専業主婦で働いた事がなく、現在も定期的な収入が無い中で預貯金などはあるのか?家賃の支払いはどうするのか?」「これから裁判を考えていること」など、面談から様々な情報を収集。

「そういえば、ここ半年、出張は青森ばかりです。。」(K子さん)

「最近、家にいる時も、トイレで1時間位電話していることがあります。」(K子さん)

「なるほど、では、一旦そこを攻めてみましょう。」原田さんは知り合いの探偵事務所に連絡。ゴリゴリの探偵調査は3日間で147万円。K子さんはモラハラに耐えつつもここ数十年で密かにへそくりをし、蓄えは十分にあるらしい。

調査の結果、決定的浮気現場の証拠が出るわ出るわ。その中で旦那が特に入れ込んでいるのは青森のとあるスナックのママT美48歳。

「馬鹿にしてるわ!地獄に堕ちてくれないかしら!!」

と、召使い生活を続けてきたK子さんもブチ切れ、心の片隅にあった「この人は私が居なければ身の回りのことは何も出来ないから、、、」という、わずかな慈悲の心もついに吹っ切れたようです。

最近では、旦那がイビキをかいて確実に寝ている真夜中に原田さんに「脱出計画」の連絡が来るそうです。真夜中の時間外労働。

「30代くらいのワケあり女性を解放するならまだしも、おばあちゃん解放する為になんでこんなに頑張らないといけないんですかねぇ。。」

なんて漏らしつつ、そんな原田さんにも葛藤はあるようです。

「私が彼女の脱出一人暮らし計画を実行して、その後、旦那が浮気帰りでルンルンで帰って来たら、家がもぬけの殻。テーブルにヨメの署名のみが入った離婚届が置いてある。私が結ぶこの(賃貸)契約で、一人の男をとてつもない不幸に陥れてしまうのではないか。。。。どうせ青森の女にだって(裁判で負けて金が無くなったりしたら)捨てられるじゃ無いですか。。。そんな事を考えると、、果たしてこれで良いものなのかと悩んだりもするんですよね。。。」(原田さん)

「いやぁ、、自業自得じゃ無いですかねぇ。。」(私)



そんなわけで、いよいよ、その任務を実行する日取りが決まった。旦那の青森不倫旅行とミサの日が重なる2週間後の日曜日である。

悲しい事だがこんな家庭は恐らく日本中に溢れているのかもしれない。私はただ、原田さんのこの重要任務の成功を祈るだけである!

以上、日本の片隅、東京は大田区多摩川近辺の人間模様をお届けしました。

ではまた来週!!!