2022.01.11
紅白前夜、眠りにつくも、明日歌う曲の歌詞が気になりブツブツ布団の中で歌う。
自分のパートを何遍繰り返しただろう。
歌詞が頭の中を浮かんでは消え、また浮かんでは消える。
全く眠れない、、
「寝れねー!!」コレが紅白のプレッシャーなのか(笑)。。
コレが自分たちのツアーなら明け方まで飲み散らかし、楽屋の布団でライブ開始5分前まで熟睡。
オマケに飲みすぎて下痢で「ちょっと待って腹いてー」なんて言って、
私のウンコ待ちで公演開始を10分位遅らせることもあるのですが紅白は違う。
飲んでもないのに下痢!
お茶の間のプレッシャーに完全にやられる。
ほぼ一睡もしないまま当日夕方となり、会場の国際フォーラムへ。
楽屋前のフロアーにはスーツ姿の集団が20人位。
どこかの組織の集会かと思ったら、今まであった事もないレコード会社のお偉いさん達が。。
「出場おめでとうございます!頑張ってくださいね!」
なんて皆さんに言われ、またプレッシャーを感じる。
普通の音楽番組とはレコード会社の本気度が全然違う!
居心地が悪すぎるので、DJ KOHNOと4階の喫煙所へ。
このフロアーは10組以上のアーティストの楽屋もあり、
楽屋に入りきれないコレまたスーツ姿のスタッフの皆さんが廊下にビシッと整列しており、
全然知らない人たちなのに、
「お疲れ様でーす!!」
なんて言われて、一番奥にある喫煙所まで「あ、どうも、お疲れ様です。」なんて、
何回お辞儀したか分かりません。
中には明らかに偉いであろう感じの人が、
「しもしも、あ、お疲れちゃーん!この後、打ち上げで、ザギンでグーフーだから後ほどチンゲゴーシュウで、
シクヨロ〜!(銀座でフグ食べるから後ほど現地集合でよろしくー)」
的な感じで、スゲーチャらくて「ザ・芸能」を感じる。
「ここは俺らの居場所ではないな。。」
更なる居心地の悪さに、喫煙後自分たちの楽屋に即戻り。
我々の楽屋フロアーは大阪桐蔭高校の吹奏楽部のみ。静かで良い。。
トイレにいくと、
「はぁー、やべー!緊張するぅー!!」
なんて言ってる高校生達におじさんもホッコリ。
「君たちは何で出るんですか?」(私)
「天童よしみさんです!!」(高校生)
「あーそうなんだ。頑張ってね!」(私)
「でも緊張するっす!どうすれば良いですかね〜?」(高校生)
「大丈夫だよ。今まで一生懸命練習してきたんでしょ?それを思い出して、フツーにやれば良いんだよ。
フツーに。絶対大丈夫だから頑張ってね!」(私)
なんて先輩ヅラした私の方も緊張しておりました。
そんな感じで紅白スタート!
どんな感じなんだろう?と楽屋で生放送のテレビを見ます。
GOひろみパイセンにのっけから飛ばされる。
「やっぱスゲーなぁ。『ジャパーン』じゃないよ、『ジョペーン』だよ。『ジャ』がハジけ飛んじゃってるもんね。
やっぱスゴいなぁ。」(私)
すっかりお茶の間の視聴者気分な我々。
「アレ?!あそこで歌ってますよ!」
ブラインドを指で下げたDJ KOHNOが、外の1階で歌ってる櫻坂46を発見。
「りょーさん、ダッシュで行って素っ裸で駆け抜けてください!」(河野)
「捕まるよ。捕まる。それ以前にこの世から消されるわ!」(私)
出演者のタイムテーブルを見ながら、
「これシックストーンズじゃないの?どうやったらストーンズって読むんだよ?」
「もう出てる人の名前が全然分からないねぇ。まあ俺らもそう言われてるんだろうけど。」などと、
完全におじいちゃん発言。純烈に癒される。
「まあ俺らは年齢的にもキャラ的にも純烈枠だろうね。」(亮二)
「確かに(笑)!」(私)
テレビでは、さっきトイレであった大阪桐蔭の子達も頑張っている。
素晴らしいパフォーマンスだ!にしても、天童よしみ先生の歌唱力はスゴイ!ぶったまげる。
「うめぇーなぁやっぱ。。やっぱりテレビの人は違うわ〜。俺らこんなんで出ちゃって大丈夫なのかね。」(私)
「いやもう今更歌は上手くならないので、普段の我々のライブみたいな感じでやりましょうよ。
イントロとか間奏とかでバンバンMCも入れてきますんで、いつも通り適当に目線で感じてください!
助け合いで!」(大蔵)
「まあそうだね。確かに今までの人たち普通に歌ってて曲中のMCとかもしないし、
ライブっぽくやるのが良いかもね。」(私)
なんて言ってるうちにマツケンサンバも終わり、
「そろそろ行きますよー!準備してくださーい!」と言われる。
「イタタタ。」
また腹が痛くなってきた。
「ヨネ(チーフマネージャー)、直前でウンコ漏れそうになったらどうすれば良い?」(私)
「いや、、そりゃもう、漏らしながらやってください!遅れたりとか絶対許されないですから!!
普段のライブとは違いますよ!!」(ヨネ)
ステージに向かって歩く。歌い終えたばかりのAIちゃん、関ジャニ∞さんとすれ違う。
向こうは覚えているか分からないのですが、昔、作詞をした事もあり、
関ジャニ∞さんの何人かはレコーディングでも会っているのでにこやかに微笑んでくれた。
相変わらず感じの良い人たちだ。
我々の出番1個前の事務所の後輩、平井大君が歌ってる中、ステージ袖にスタンバイ。
ソロでよくやるなぁ。ホントスゴいよ。俺なんか絶対無理だね。グループで仲間がいて良かったよ。
なんて思っていると、ステージ袖は戦争状態。
「どいて!どいてー!」
セットの片付けや音響の人たちが何十人も忙しなく動いています。
「ケツメイシさーん!出番でーす!立ち位置についてくださいーい!」
メンバーで拳を合わせてステージに向かう。
DJ KOHNOのブースはまだセットされてない。ま、間に合うのか。。
ケツメイシの紹介ビデオが流れ、、
イントロ2秒前、、間に合った。あぶねぇ〜〜。
ステージを見る。お客さんが沢山いる。ここは国際フォーラム。
いつもライブをやってるアリーナなんかより全然小さい。イントロで大蔵がいつものように煽る。
お客さんも反応してくれる。昨日のシーンとしたリハーサルより緊張は全然ない。イケる。余裕。
亮二がサビを歌う。流石だ。だてに直前まで弁当食っていない。大丈夫だ。
亮二のサビの間、頭の中で
「顔で、顔で、顔で、顔で、顔で笑って、、」
と自分のパートの出だしを頭の中でループ。自分のパートキター!!
「神様、もう一生EDになっても良いので、この瞬間だけ俺に力をください。」と念じる。
「俺って音痴だなぁ。」と実感しながらも歌う。苦しい。恐らく緊張で呼吸が浅くなっていたのだろう。
「ラップが突っ込んでるな。」そう思いつつも、まあ大きなミスもなく16小節のラップが終了ー!!
あー良かった。ホッとした。。
曲は続いているものの、これで完全に他人事。何だか楽しくなってきたよ。次、大蔵のラップパート。
大蔵の歌い出し前、
「気合入れろー!!」
とマイクを外して大蔵に向かって叫ぶ(その瞬間があとで録画見たら映ってた(笑)。)
大蔵開始!「思い通り行くこと少ない世の中♪、、、ゆ#$%&%&’’()、、、、、、」
え、
え、
え、うそ、、
マジで!?
大蔵さん、歌詞飛ばした?ほんの0,3秒位でしたが、あの瞬間、私には永遠に感じました。
「だいぞぉーーーーー!!!!!!!!!!!!!戻ってこーーーーーーい!!!!
だいぞぉーーー!!!!」
「♪#$%&’、、、、、ここから〜♪」
「も、も、戻ってきたー!!おかえり大蔵ーー!!」
もう笑いが止まりません。その後は安定感を取り戻し、アウトロのMCもバッチリ。
さすがのリーダー大蔵さんです。司会の大泉洋さんに初出場の感想を求められ、
「実は今年、(コロナで)4人揃って歌うのが初めてでして、、仕事始めが仕事納めになりました。」(私)
と、下ネタでもなく、誰かを傷つけるわけでもなく、
「小ボケのコメントでややウケ」というNHK的には満点回答でステージを後に。。
「いやぁ心臓に悪いね。。」(私)
蜜を避けるためか、エンディングに出る必要のない我々は完全に終了モード。
楽屋にこっそり持ち込んだビールで乾杯です。極度の緊張から解放され皆饒舌。
「やっちまったなぁ〜大蔵!」
事務所の社長をはじめ、色々な方々に突っ込まれ肩を落と(したフリをする)す大蔵。
「ぷぷ。やっちまったなぁ大蔵。でもね、、逆に俺はあそこ(歌詞飛ばして)から戻ってきた大蔵がスゴいと思うよ。
俺なら絶対戻ってこれないもんね。ぷぷぷ。」(私)
「確かに!あの瞬間終わった、、、って思ったもん。ふふふ。」(亮二)
「スゲーよ、やっぱ大蔵スゲー。ぷぷぷぷ」(私)
「あのリカバリー力。やっぱリーダーは違いますね。ぷぷ。」(DJ KOHNO)
「やっぱりポジティブに考えないと。あそこから戻ってきた精神力、それも勿論素晴らしいし、
口パクじゃないって事も証明できたから逆に良かったんじゃないの?」(私)
「大蔵さん、さすがっす!!よくお戻りになられました!」(若手マネージャー)
「まさに筋書きのないドラマ。ハラハラさせといて戻ってきて、あの素晴らしいMC。
大蔵さん、(ギョロ目で)流石っす!!」(チーフマネージャーヨネ)
「、、、、、、、、、、はぁ〜、もう〜一生言われんだろうな。。」(大蔵)
「クヨクヨすんなよ。もう終わっちまった事グダグダ言ったってしょうがないだろ!
じゃあ俺はもう飲みに行くから。じゃあねバイバイ!!解散〜!今度こそ良いお年を〜!!!」(私)
国際フォーラムの真ん前の有楽町駅から方向が同じDJ河野と京浜東北線に乗り込む。
蒲田駅のネオン街へ。
何軒かの立ち飲み屋の前を歩くと、顔見知りが私を見つけ、
「あれ?りょーさん?さっき紅白見てましたよ。あれって生じゃないんですか?」(立ち飲み屋の住人)
「うるせーな(笑)、俺らクラスだとエンディングにも出れないからもう解散して飲みにきたの!!」(私)
河野と立ち飲み屋のテレビを見る。
さっきまで紅白に出てた人たちが、別のカウントダウンの歌番組に出てる。
「みんな働くなぁ。スゴいよね。尊敬しちゃう。」(私)
「いや、ホントの勝者はわざわざ大晦日なんかに働かないですよ。
来年はツアーをやって大晦日はのんびり過ごせるようにしたいですね。」(河野)
「ホントだね。」(私)
しばらく飲んでいると携帯が鳴る。液晶には「田中淳」。父親からだ。
「おー!りょー!見たぞ紅白。お前たちが一番素晴らしかったよ(←完全な親バカ)。
最後のコメントも良かったし100点!来年もコンサートあるんだろ?がんばれよー!じゃあな。」(淳)
初めて横浜アリーナのツアーに両親を呼んだ時も褒められた(というか「安心した」と言われた)けど、
父親にこれだけ褒められたのは49年生きてきて初めてかもしれん。嬉しい。。
上の子が生まれてサラリーマン辞めた時、
「アホか!ラップで飯が食えるのか!」
なんて言われて、
「俺はあなたみたいにエリートではないし、別の道でやってやる。見てろよ。」と思いながら
わだかまりを抱えてやってきた「22年戦争」がやっとここに終結した気がした。
電話を切り、
「親父からだったわ。スゴい喜んでてホメられちゃったよ。
(4年前に亡くなった)健太(河野)の母ちゃんにも見せてやりたかったなぁ。
紅白ってこんなに喜んでくれるんだねぇ。。」(私)
「まあ、でも母ちゃんの妹たちも俺は関係が深いんで、
その分彼女たちが喜んでくれてると思うから良いですよ。」(河野)
「そうかぁ。。それでも見せたかったよ。。。」(私)
その日のハイボールはいつもより濃く感じた。
朝の10時過ぎまで飲み、吉野家で締め、家でゲロ吐いて寝た。
(結論)
なんだかんだ言っても、紅白出場は親孝行。