涙でリールが見えない RYO from ケツメイシ

2018.03.14

 大学の先輩(ピンさん)が20年以上勤めた製薬会社を退社し、スナックをオープンするという暴挙に出ました。我々アラフィフはリストラ真っ盛り世代。
窓際になって待遇が下がろうが会社にしがみつく者、早期退職である程度の退職金をもらってまた新たな勝負に出る者、人生はそれぞれです。
ピンさんは50歳手前で「スナックオープン」という全く異業種への勝負に出ました。スナッカーの私としてはコレは行かない訳にはいきません!
ネオン街などではなく、横浜の奥地の民家、本当に真っ暗な道端にひっそりと佇むスナック。
「こんな立地でホントに大丈夫なのか。。。」と恐る恐る扉を開けるとカウンター席は地元の常連のおじさんで満席です。
気立てのいいママさんとピンさんの持ち前の明るい人柄で大繁盛していました。4つあるテーブル席はピンさんの店を応援しようというピンさんの同級生(私の先輩)で埋まってます。

軽い同窓会のノリに後輩の私が一人参加。最近は仕事でも年下の人ばかりで、日常生活で怒られることも滅多にないんです。
昔のサラリーマン時代は「りょー弁当買ってこい!」「ヘイ!!」なんて言ってたのが心地良かったのですが、この晩はそんな懐かしい感覚が蘇りましたね。
やっぱり私は人を引っ張っていくリーダー的な感じではなく、子分キャラがお似合いのようです。親の教育が良かったのか出会いに恵まれたのか、
先輩に可愛がられる嗅覚だけは優れているように思います(←自分で言うな)。楽しい昔話にうまい酒、最高の夜になりました。
ものすごく久々に会ったから私は製薬会社時代のピンさんは知らないんですけど、
「そりゃこの先不安はあるけど、そんな事気にしてもしょうがないしな。まあ今が一番楽しいわ!RYOも頑張れよ。」
なんて言っててね。ホント輝いていましたよ。過去の栄光にすがって自慢話したりウダウダ後悔する人間が多い中で、いくつになっても「今が一番」って言える人生は素晴らしいな、
なんてガラにもなく思ってしまいました。

そんな私も事務所に行けば所属する歌手としては最年長、最古株です。先日は確定申告で事務所に行った後も後輩のグループ1 FINGERのCha-kaのラップ指導です。
伸び悩む売り上げ、観客動員、グループの中での役割など、悩みは尽きないようです。
「今後どうやっていけばいいか分かりません。指導をお願いします!」
なんて言われて、事務所でキッチリ文の構造レベル、韻の踏み方から指導。アンダーグラウンドとメジャーフィールドの違い、聞き取りやすさ、大衆性、パンチライン、
言葉を選ぶ際の推敲の重ね方、時給6000円は取れそうな塾のカリスマ先生なみの熱血指導。2時間しか会議室が使えないということで、
その後は共通のレコード会社のエンジニアも合流し、立ち飲み屋の小さいテーブルでヤツのラップを聞きながら6時間指導。最後はボロクソに酔っ払った私に、
「もうめんどくせ!お前が思うようにいい塩梅でやれ!!」
と帰らされました。

最終的に足りないのは技術云々より「突破力、積極性」ということに尽きます。事務所に入ってきたヤツを見ていても、まず顔見知りの人としかしゃべりません。コレではダメです。
事務方の皆さんはパソコンを見つめ真面目に働いています。そこで、
「皆さんお疲れ様でーす!!1 FINGERのCha-kaです!もう次売れないと後がないんで、ホントにホントに宜しくお願いしまーーす!!」
とでかい声で挨拶をしなければいけません。

番組のタイアップを取る班の人にはすり寄っていって、
「どうですかね?なんかいい話ありません??」
と猫なで声で甘えなければいけませんし、入りたての新入社員の子にもキッチリ挨拶してどうでもいい会話をしなければいけません。
そういう若い子は、「あの時Cha-kaさんが話しかけてくれたなぁ。」って覚えていて、いざという時に応援してくれるかもしれません。その辺の意識が足りていません。

私は会社に行けば必ず事務方の人のパソコンを愛くるしい眼差しで覗き込んで、
「どうですか?売れてますか?」
「何やってんですか?」
と話しかけます。これには相手も苦笑いするしかないのですが、必ず記憶には刷り込まれます。そんな事務所での俺の姿をCha-kaは後ろで見ていたはずです。
よっぽどの天才か優れた歌手じゃない限り「売れるかどうか」なんて人間性と人脈なんです。
ヤツが何を感じてくれたかは分からないのですが、そういうところも意識した方がいいと思いました。もう次売れなきゃ契約切れだよ。もう5年もいるんだからさ。。あっという間だよ。
後悔しないよう死ぬ気で頑張ってくれ!!

そんなことをしていた1週間でした。
今週も気合いで乗り切りましょう!!!!!