涙でリールが見えない RYO from ケツメイシ

2017.09.12

2017年天皇賞「キタサンブラック」と言えばサブちゃんこと北島三郎先生、2016年秋華賞「ヴィブロス」と言えば大魔神こと佐々木主浩投手。 「馬主」そう、それは成功者の証、男たちの永遠の憧れ。。富と名声を得たものが大豪邸を建て、不動産投資や豪遊、飲み屋のママに貢ぎ倒すことにも飽き、最終的にたどり着くのが「馬」。。

私もそう思っていました。ところがどうでしょう。私の身近なところにも「馬主」が居りました。私の飲み仲間「後藤JAPAN」メンバーであり、小学校の同級生でもある北原くんである。

彼は競馬も好きなのですが、実際の生き物としての馬が大好き。一昨年くらい前に、 「馬買ったんだよ~!!」(北原くん) なんて言ってたんです。 「馬っていくらすんの?」(私) 「2016年北海道サマーセールで290万!税込みで313万!!」(北原くん) 「そんなもんなんだ。車とそんな変わんないじゃん。もっと何千万とかするのかと思ってたよ。」(私) 「でもホント正直、自分の実の娘より可愛くてねぇ。うっしっし。」(北原くん) なんて言っては、忙しい仕事の合間を縫って、牧場にいる赤ちゃん馬の様子を見る為に北海道へと足繁く通っていました。私と夕方から飲んでいたある日も、 「明日は娘(馬)に会いに行くんだけど6時25分羽田発だから、4時半まで付き合ってくれ!!」(北原くん) なんて言って、帰りたがる私を引き止めては飲み続け、自宅にも帰らず酒場からそのまま羽田空港に直行したりしていました。昼前に電話があり、 「どうしたの??」 なんて聞いたら、 「道がガラガラで5時に羽田に着いちゃってさぁ、搭乗口前のマッサージチェアで目を閉じたら11時だったんだYO!!やっちまったぜ~!!来月は会いに行けないのによぉ~!!『アンタ何やってんのよ!!』ってヨメには怒られるしよぉ~。やっぱギリギリの5時半まで飲めば良かったぜ!!チキショー!!」 なんて言ってるとてもチャーミングな男です。

そんな彼から久々に電話がありました。 「りょう!うちの娘(馬)がデビューするから見に来てくれ!!」(北原くん) 北海道の牧場で育った彼女がついに大井競馬場でデビューする日が迫って来ていたのでした。彼女の名前はカラフルロマンス。2歳メス。あのオグリキャップの妹、オグリローマン(桜花賞をとっている)のひ孫なのだそうです。 「ひ孫ったって何百頭いんだよ??『いとこの娘のクラスメートの実家の隣に住んでるおっさんの不倫相手』位遠いんじゃねーの??」(私) 「いやいや孫でもひ孫でも、あのオグリキャップのDNAを引き継いでいるんだYO!コレはあるよ!!」(北原くん) 実際、デビュー前に課される模擬レースでは好内容で1着を獲ったそうです。 「ホントにあるかもしれないから!いやあるから!それに優勝すると記念撮影があるから、りょう達正装で来てくれ!!」(北原くん) なんて言われたので、「後藤JAPAN」一同全員スーツで集合!! 「アンタもちゃんとしたスーツの1着位持ってないとダメよ!」 とヨメに言われ、亭主改造計画みたいにおばさんのスタイリストに言われるがまま、2年前に銀座で作ったオーダーメイドのスーツをデビューさせました。ダンサーのタケも以前ステージ用に作ったという肩からトゲトゲが沢山生えた「北斗の拳の雑魚キャラ」みたいなスーツで集合。皆正装慣れしていないのでコントのようです(笑)。

そもそも競馬場に行ったことのなかった私は、駅に着き、既に場内に入る北原くんに電話。 「競馬場ってどうやって入るの??『オグリキャップの妹のひ孫の応援です!!』って入り口で言えばいいのかな??」(私) 「いやそんなこと言っても受け付けの人意味不明だから!!とりあえず『入場券』ってのが100円で売ってるからそれで入ってくれ!!」(北原くん) 場内で北原くんと合流。娘の晴れ舞台のためにバズーカーみたいに長い一眼レフカメラを肩から下げていました。 「皆さん、今日は我が娘の晴れ舞台の為によく来てくれました!!ありがとうございます。あ、一応今こんな感じなんで。」(北原くん) と、彼が差し出した数紙の競馬新聞を見ると、、、その全ての競馬新聞の予想には本命の◎が並びます。やはり模擬レースでの好内容の1着が効いているようです。 「おお!!すげーじゃん!!コレは、、あるな!」(一同) 「いやぁこの日を迎えるまでには色々ありました。あの牧場で生まれたての彼女を見て一目惚れ、、あの時から無事にレースに出れるまで立派に育ってくれました。本当に感慨深いです。デビュー戦と言うのは本当に一生に1回ですから、皆さん、思いっきり応援しましょう!!」(北原くん) 「とりあえず馬券買ってくるわ!!」(私) 「りょう、焦るな。馬券はギリギリでいい。とりあえずレース前の彼女の様子を見にパドックに行こう。」(北原くん)

これから出走するライバル達と共に、彼女がゆったりと歩いています。競走馬というものを間近で見たのは初めてですが、なんたってデカい!!毛並みも綺麗でケツもジャマイカ人女性みたいにプリッとしてます。 「コレあるよ!!さすがオグリの血を引きし者だね!」(私) 「いやいや、、もう無事に走り終えてくれたらそれだけでいいんだ。」(北原くん) そう言ってパドックを歩く娘の写真を「それいらないだろう!」って位無駄に長い望遠レンズでバシャバシャ撮っています。本当に嬉しそう。まさに娘の運動会を見守る父親の絵図らです。

「ねぇ、コレ1着だと馬主はいくら貰えんの?」(私) 「いやいや俺は金の為にやってんじゃないのよ!」(北原くん) 「正直に言いなさいよ!!」(私) 「いやいいんだよ。。え、1着??1着は、、まあ~100万だよ。。」(北原くん) 「すげー!!地方競馬のデビュー戦で100万ということは、これから勝ち続けて中央競馬に行ったらどエライことになるな。。夢あるぅ~~!!まあ、とりあえず今日は100万だから、長~い黒塗りハイヤーチャーターして、皆んなでザギンでグーフー(銀座でフグ)だな!!」(私)

そんな妄想タイムも過ぎ、いよいよレース本番です!「馬主席の高台から戦況を見守る」という選択枠もありましたが、なんせデビュー戦ですのでゴール地点間際のレールにしがみついて観戦です!!

スターーーーート!!

カラフルロマンス、本命の予想通り順調な滑り出し、

「イケーーー!!」(おじさんたち一同)

最終コーナーまでぶっちぎりの1位です。やや後ろで見ていた北原くんに、 「マル(北原くんの名前)!!やべー!!コレいくぞーー!!」(私) なんて興奮しながら伝えると、彼は両手広げ「まだまだあるぞ」というゼスチャー。落ち着いてます。

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

あれ、、、、

あれれれれ、、、、、、、

最終コーナーを過ぎて急激な失速、、、、、、、、、、、、、

1頭抜かれ、、

2頭抜かれ、、、

3頭抜かれ、、、、、、、、

4着ゴーール。。。。。

「マジかよーーーーー!!!!!!!」(一同) 振り返ると、両手で顔面を覆っている北原くんの姿がありました。。

やはり現実は厳しいです。「強い者が勝つ」のではなく「勝つ者が強い」のです。呆然とする我々をよそに、北原くんはすぐ騎手と調教師の元へ向かっていました。急激な失速の理由を聞きに行ったようでした。もちろん娘の体調を心配してのことでしょう。戻ってきた彼は、 「ああ~残念!!、、鼻出血だってさ。。。」(北原くん) 「鼻出血」とは競走馬で骨折と並んでよく見られる疾病で、いきなり思いっきり走ると肺から出血して、馬の場合それがそのまま鼻に行くらしく、呼吸ができなくなるそうです。だから呼吸ができないまま、彼女は最終コーナー以降走っていたことになります。ガッカリしている北原くんを見て、 「俺の10万返せ!!」 とも言えず、 「まだ戦いは始まったばかりだ。俺らはカラフルロマンスが1着を取るまで追っかけをするぜ!!」(私) 肩を落とし帰ろうとすると、見たくないモノを見てしまいました。先ほどのレースで1着を獲った馬と馬主とその親衛隊の記念撮影です。。

「くっそ~!!また正装で来るからな。。」(私)

黒塗りのハイヤーで銀座に直行する予定でしたが、一同ガックリ肩を落とし競馬場が出している無料送迎バスで大井町へと向かいました。100円でマグロが山盛り食える激安居酒屋で反省会。お通夜並みの暗さでしたが、北原くんのヨメが娘をママチャリに乗せて反省会に加わりポップになりました。 「やっぱりねぇ~。まあ次があるじゃない。うっふっふ。」(北原くんヨメ) 実に素晴らしいヨメだ。普通のヨメなら、 「ホラだから言ったじゃない!くだらないことに金使ってんじゃないわよ!」 とか言いそうなものですが、むしろニヤついていましたからね。

まあ、それにしてもいいものを見せてもらいました。我々はこれからもカラフルロマンスの追っかけをするので、皆さんもどこかで見かけたら応援してくださいね!!宜しくお願いします!!!

(まとめ) 「カラフルロマンス」デビュー戦。一番人気からまさかの4着。 獲得賞金40万円(←厩舎代など維持費に月30万掛かるので「エサ代にもなんねー」とは本人談)。 レース中鼻出血を発症の為、30日間出走制限。

「北海道で生まれ育った純朴な生娘に、東京のゲットー『蒲田』の隣町『大井』は刺激が強すぎたようだ。一度北海道に帰省させ10月復帰させます!!」とは後日、馬主からのメール。