涙でリールが見えない RYO from ケツメイシ

2023.01.24

 先週、近所の後輩と久しぶりに話をしたら、どうやら引っ越しを企てているらしい。

最近はプロデュース業などでちょこちょこ儲けるようになり、

生活にも若干の余裕が出てきたからだ。

現在、家賃11万円のワンルームから18万円位の一軒家を狙っているらしい。

「止めとけ!」

私は言いました。

せめて半年間、何もしないでも暮らせるくらいの生活防衛資金を貯めてからにしろと。

スポーツ選手が怪我をしたら一瞬でクビになるのと同じように、音楽の仕事にも安定はない。

仕事のオファーなんていつ切れるか分からない。

よほど売れて、過去の作品も十分にあり、定期的に印税が入ってくるようになるまで安定はないからだ。

社会的信用も低い。



私が製薬会社の営業だった頃はまだそこそこ景気も良く、

2万円の自己負担で16万円の家に住めるくらい住宅手当も出ていた(今では考えられない)のですが、

「サラリーマンを辞めて音楽で行く」という事になった時、どこで聞きつけたのか不動産屋から電話があり、

「法人名義から田中さん名義になるので、敷金礼金を払い直してください。」

と、言われた時は「え、同じところに住んでいるのに、、、なんで?」と、

今思えば当たり前(当時のマネージャーさんに100万借りた)なのですが、

辞めた後に「社会的信用の無さ」と「これから大変になるぞ、、、」と改めて感じたものです。

それだけ社会的信用は低い。

保険証も社会保険から国民保険になり、サラリーマンの時は、

「ヨメ子どもいて手取り19万円位でやってらんねぇ」

なんて思っていたのですが、住宅手当に保険料などを含めると倍位の額になり、

改めて「守られていたんだ俺。。。」と感じましたね。

それから2年間、朝から薬局のバイト、夜から朝までレコーディングという生活を続け、

2枚目のアルバムがオリコン1位になり、

「これはもう家でしょ。家買うしかないでしょ!いつやるの?今でしょ!」(私)

と、勝手に盛り上がり、事務所に相談したら、当時の経理の松崎さんっていうおじいさんが、

「今のりょーさんならいけると思いますよ!」

なんて言われてますます盛り上がり、

松崎さんも付き添ってくれてローンの窓口で相談して色々話をする事30分。

「歌手とか音楽関係の方や芸能関係の方々は収入が不安定なので

長期のローンはお断りしてます。」(銀行のヤツ)

、、、、

「まあ、5年で3000万円ならお貸しできますが、、」(銀行のヤツ)

なんて言われてね。

「3000万で東京に夢のマイホームなんて買えるかYo!しかも5年かYo!クソぉー、、」(私)

と絶望に泣き崩れる私を、松崎さんが優しく肩を抱きかかえ、

事務所までトボトボ歩いて帰ったのも今となっては懐かしい思い出。

住宅ローンが死んだらチャラになる「団体信用生命保険」ってあるじゃないですか?

あれも歌手は厳しいです。

私の今の家、ローン借りた額の半分しか団信入れなくて、

同じ銀行で2つローンを組むっていう意味不明な事やってますもん。

おまけに金利も今は低金利ですが、歌手の場合、普通の会社員の方の2倍位です。

この超低金利の時代、「繰上げ返済は絶対やっちゃダメ」というのが世の中の常識ですが、

私の場合は団信が付いていない方のローンは余裕のある年は繰上げ返済です。

などと、歌手とか音楽関係を目指す方々には夢も希望もない話をしてしまいましたが、

私が何を言いたいかというと、

「引っ越しはお前にはまだ早い。」という事です。



よく昔の芸人さんは、

「無理して良い所に住んで、その家賃が払えるように仕事を頑張る」

なんていう発想の方々もいらっしゃいましたが、もうそんな時代ではありません。

20年前は莫大な収入源になったCDももう無い。

今の時代、一発逆転の可能性は限りなく低くなりました。

昔でさえ低かったのに今はもっと低い。コツコツやるしか無いんだ。

やるべき事を当たり前のように毎日コツコツ。 

だからまず半年分の生活防衛資金を貯めろ!話はそこからだ。



そんなわけで、「後輩の引っ越し問題」と「音楽業界の厳しさ」について今週はフォーカスしました。

また、先週言っていた母、輝子の調子は相変わらず悪い。もう3日も意識は戻っていない。

今週末も泊まり込みで実家に行き病院通います。

みんなも色々大変な事もあるでしょうけど、上向いてなんとか乗り切っていきましょう!

ではまた!!